商品コンセプトという言葉は、商品開発でよく使われます。けれど、実際には少し分かりにくい言葉でもあります。なんとなく雰囲気のよい言葉、商品をかっこよく見せるためのコピー、企画書に入れるための文章。そんなふうに扱われることもあります。
でも、本来の商品コンセプトは、もっと実務的なものです。その商品が、誰に向けて、どんな価値を届けるのか。それを一文で整理したものが、商品コンセプトです。地域産品の商品開発では、素材や製法、作り手の想いが豊かであるほど伝えたいことが多くなります。だからこそ、コンセプトが必要になります。
商品コンセプトは、商品の説明ではない
商品コンセプトは、商品の説明文ではありません。たとえば「地元の素材を使った焼き菓子です」「昔ながらの製法で作っています」「職人が丁寧に仕上げています」「地域で長く親しまれています」。これらは大切な情報ですが、これだけでは商品コンセプトとは言い切れません。誰に向けた価値なのかが見えにくいからです。
商品コンセプトで大切なのは、特徴を並べることではなく、その特徴が生活者にとってどんな意味を持つのかを整理することです。
誰に向けた商品なのかを決める
商品コンセプトを作るとき、最初に考えるのは「誰に向けた商品なのか」です。自宅で楽しむ人なのか、大切な人に贈る人なのか、目上の方への手土産を探している人なのか、職場で配れるものを探している人なのか、お酒に合うものを探している人なのか。誰に向けるかによって、同じ商品の見え方は変わります。
たとえば同じ焼き菓子でも、家族で食べる日常のおやつ、母の日に贈る上品なスイーツ、職場で配りやすい個包装ギフト、お酒に合わせる大人の手土産では、伝えるべき価値が違います。商品そのものを変えなくても、向ける相手が変わるだけで、コンセプトは変わります。
どんな場面で選ばれるのかを考える
次に考えるのは、選ばれる場面です。商品は、何もないところで選ばれるわけではありません。生活者には、商品を探す理由があります。お礼をしたい、失礼のない手土産を持っていきたい、母の日に感謝を伝えたい、自分では買わない少し良いものを贈りたい、地域らしさのあるものを届けたい。こうした場面があるから、商品が必要になります。
地域産品の商品開発では、商品の背景を語ることに意識が向きやすいものです。けれど、生活者が最初に考えているのは地域の背景だけではありません。自分の用事に合うか、相手に喜ばれるか、その場面で失敗しないか。そこを見ています。だから、コンセプトには場面が必要です。
商品の特徴を、生活者の価値に置き換える
商品コンセプトを作るうえで大切なのは、特徴を価値に置き換えることです。たとえば「地元の果物を使っている」という特徴をそのまま伝えるだけでは、生活者にとっての意味が少し弱いことがあります。
そこから一歩進めて、季節感を贈れる、土地の空気を感じられる、甘すぎず大人にも贈りやすい、素材の味を楽しめる、という価値に置き換えていく。この作業が、コンセプトづくりです。作り手の言葉を、生活者が選びやすい言葉に変える。地域ギフト研究所では、これを価値翻訳と考えています。
良いコンセプトは、一文で言える
商品コンセプトは、長く説明しすぎない方がよいものです。背景はもちろん大切ですが、最初の段階では一文で言えることが重要です。たとえば、お酒好きの方に贈りたい地域素材を使った大人の手土産、母の日に感謝を伝えるやさしい甘さの地域スイーツ、職場で配りやすい個包装の地域菓子ギフト、自分では買わないけれどもらうとうれしい地域のごちそう。
このように、誰に、どんな場面で、どんな価値を届けるのかが一文で見えると、商品開発の方向性が整理されます。コンセプトが一文で言えないと、パッケージも写真も商品説明も価格も、ぶれやすくなります。
コンセプトがあると、判断がしやすくなる
商品コンセプトは、きれいな言葉を作るためだけのものではなく、実務では判断基準になります。パッケージは上品にするか親しみやすくするか、価格は日常向けかギフト向けか、写真は素材を見せるか贈る場面を見せるか、商品説明では製法を語るか使う場面を語るか、どの販路で売るか。こうした判断をするとき、コンセプトが軸になります。
たとえばコンセプトが「職場で配りやすい個包装ギフト」なら、個包装、日持ち、数、配りやすさ、価格帯が重要になります。一方「目上の方に贈る上質な地域ギフト」なら、箱の質感、包装、見た目の品格、説明カードが効いてきます。コンセプトが違えば、整えるべき要素も変わります。
地域産品でよくあるコンセプトの失敗
地域産品の商品開発では、コンセプトが広すぎることがあります。地域の魅力を伝える商品、こだわりの素材を使った商品、幅広い世代に喜ばれる商品。こうした言葉は悪くありませんが、少し広すぎます。誰に向けているのか、どんな場面で選ばれるのか、なぜ今選ぶのかが見えにくく、結果としてパッケージや商品説明もぼんやりしてしまいます。
コンセプトは、広くするほど弱くなることがあります。すべての人に向けるのではなく、まず一人の選ぶ場面をはっきりさせる。その方が、商品は伝わりやすくなります。
地域らしさを、どうコンセプトに入れるか
地域産品の場合、地域らしさをどう入れるかも大切です。地域名をそのまま前面に出す方法もありますが、それだけでは選ばれる理由になりにくいことがあります。大切なのは、地域らしさを生活者の価値に変えることです。
その土地の素材だから季節感がある、その土地の製法だから他にはない食感がある、その地域の背景があるから贈る理由が深まる。地域らしさは単なる情報ではなく、選ぶ理由を支える背景です。コンセプトでは、地域らしさを前に出しすぎるのではなく、価値を深める要素として整理することが大切です。
コンセプトは、あとから磨いてよい
商品コンセプトは、最初から完璧でなくてかまいません。むしろ最初は仮説でよいと思います。誰に向けるか、どんな場面で選ばれるか、どんな価値として伝えるか。この仮説を置いたうえで、売場やECで反応を見ていく。実際に選ばれた理由を見ながら、言葉を磨いていく。
商品コンセプトは、一度作って終わりではありません。市場や生活者の反応を見ながら、少しずつ精度を上げていくものです。
おわりに
商品コンセプトは、商品の説明ではありません。その商品が、誰に向けて、どんな場面で、どんな価値を届けるのかを整理するものです。地域産品には、素材、製法、歴史、作り手の想いなど多くの価値がありますが、それらをすべて並べるだけでは生活者には届きにくいことがあります。大切なのは、地域の価値を、選ばれる一文に翻訳することです。
誰に、どんな場面で、どんな価値を届けるのか。この問いから考えることで、商品開発の方向性は見えやすくなります。
▼地域産品の商品開発を市場・設計・伝え方・数字の4つの視点で整理する全体像は、売れるは設計できるとは何かで解説しています。
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