地域産品の商品開発では、素材にこだわり、パッケージを整え、商品名を考え、写真を撮る。どれも大切なことです。けれど、商品を事業として続けていくには、もうひとつ考えておきたいことがあります。それは、何個売れれば成立するのか、ということです。
売れたらうれしい、たくさん売れたら成功。そう考えるだけでは、商品開発の判断は曖昧になります。大切なのは、販売数を願望ではなく、数字として考えることです。
何個売れれば成立するのかを考える
地域産品の商品開発では、最初に販売数の目安を持っておくことが大切です。月に10個売れればよい商品なのか、月に100個売る必要がある商品なのか、年間で1,000個売れれば成立する商品なのか。それによって設計は変わります。
少量でも利益が残る商品なのか、ある程度の数量を売らないと成立しない商品なのか。催事向きか、EC向きか。ギフトシーズンに集中して売る商品か、通年で少しずつ売る商品か。販売数の前提が違えば、価格も、包材も、販路も、在庫の持ち方も変わります。だからこそ、商品開発の早い段階で「何個売れれば成立するか」を考えておく必要があります。
売上ではなく、利益から逆算する
販売数を考えるとき、まず見るべきなのは売上ではなく利益です。売上は商品が売れた金額、利益はそこから原価や手数料などを引いて残る金額で、この2つは違います。詳しくは「売れているのに儲からない理由」で解説していますが、ここでは「1個あたりにいくら残るか」を起点に販売数を考えていきます。
たとえば1個3,000円の商品が100個売れれば、売上は30万円です。一見すると悪くない数字ですが、1個あたりの利益が300円しか残らないなら、100個売っても利益は3万円。1個あたり1,000円残るなら、同じ100個で10万円の利益になります。同じ販売数でも、残る利益は大きく変わります。
つまり見るべきなのは「何個売れたか」ではなく、「何個売ると、いくら利益が残るか」です。販売数は、利益とセットで考える必要があります。
まず1個あたりの利益から販売数を逆算する
販売計画を考えるときは、最初に1個あたりの利益を見ます。売価から原価や包材費、手数料、送料などを引いたあとに、いくら残るのか。ここが見えていないと、販売数の判断はできません。
たとえば1個あたり500円の利益が残る商品なら、月に5万円の利益を出すには月100個。1個あたり1,000円残るなら、月50個で同じ利益になります。このように、販売数は利益額から逆算できます。「月に100個売りたい」と感覚で決めるのではなく、どれくらい利益が必要で、そのためには何個売る必要があるのか、という順番で考えることが大切です。
初期投資を回収するには何個必要か
次に考えたいのが初期投資です。商品開発には、パッケージデザイン、箱の制作、撮影、商品ページ制作、試作、資材の発注など、売る前にかかる費用があります。これらは、商品を売りながら回収していくものです。
たとえば初期投資が30万円なら、1個あたりの利益が500円のとき回収には600個、1,000円なら300個が必要です。この数字が見えると、何か月で回収できそうか、どの販路ならその販売数に届きそうか、価格や仕様を見直す必要があるか、といった判断がしやすくなります。
販路から販売数を考える
販売数は、願望だけでは決められません。どの販路で売るかによって、現実的な数量は変わります。自社EC、ECモール、直売所、道の駅、百貨店催事、卸販売、法人ギフト。それぞれ、売れる数量の考え方が違います。
自社ECなら集客力や検索流入、SNS、既存顧客との接点が必要になります。催事なら期間中にどれだけのお客さまと接点を持てるか。卸販売なら掛け率や継続発注の可能性。法人ギフトなら、1件あたりの数量は大きくなる一方で、提案タイミングや条件が重要になります。販売数は、どこで売るのか、その販路では何個売れる可能性があるのか、というところから逆算する必要があります。
少量で成立する商品と、大量に売る必要がある商品
商品には、少量でも成立するものと、大量に売らないと成立しにくいものがあります。少量で成立する商品は単価や利益率が高く、丁寧な提案に向いています。ギフトセット、高価格帯の商品、法人向け商品、季節限定商品などで、数量よりも単価や提案先が重要になります。
一方、大量に売る必要がある商品は単価が低く、回転数が重要です。日常使いの商品、小さな菓子、土産品、消耗品などで、販売場所や棚の確保、リピート性が鍵になります。どちらが良いという話ではなく、自分たちの商品がどちらの設計なのかを理解することが大切です。
ギフト化すると、販売数の考え方が変わる
地域産品をギフト化すると、販売数の考え方も変わります。自宅用の商品は日常的に少しずつ売れますが、ギフト商品は季節や用途に合わせて売れることが多い。母の日、父の日、お中元、お歳暮、年末年始、送別、内祝い、法人のご挨拶。こうしたタイミングに需要が集中します。
そのため、ギフト化する場合は月ごとの平均だけでなく、季節ごとの販売計画を見る必要があります。通年で月10個売れる商品なのか、母の日に100個売る商品なのか、年末に300個動かす商品なのか。販売数の山をどこに作るかで、商品設計や在庫計画も変わります。
売れすぎても困ることがある
販売数を考えるとき、意外と見落とされるのが、売れすぎた場合のことです。たくさん売れるのは良いことですが、地域産品では供給量に限りがあることもあります。原材料が限られている、手作業が多い、製造できる人が少ない、品質を保つのに時間がかかる、季節によって生産量が変わる。
こうした場合、急に大量注文が入っても対応できないことがあります。無理に対応すると、品質が落ちたり、作り手に負担がかかったりします。だから販売数は「多ければ多いほど良い」とは限りません。どれくらい売るのが適正か、どこまでなら品質を保てるか、どの販路なら無理なく続けられるか。ここまで考えることが大切です。
販売計画は、商品を続けるための設計
販売計画というと、少し堅い言葉に聞こえるかもしれません。でも本来は、商品を長く続けるための設計です。いくらで売るのか、何個売るのか、どこで売るのか、どれくらい利益を残すのか、いつ初期投資を回収するのか。これを考えることで、商品開発は現実に近づいていきます。感覚や勢いだけで進めるのではなく、続けられる形を考える。地域産品の商品開発では、これがとても大切です。
おわりに
地域産品の商品開発では、何個売れれば成立するのかを考える必要があります。売上だけを見るのではなく利益を見る。1個あたりの利益から、必要な販売数を逆算する。初期投資を回収するために何個売る必要があるかを確認する。販路ごとに、現実的な販売数を考える。こうした数字を見ることで、商品開発の判断は変わります。
売れることは大切です。けれど、それ以上に大切なのは、続けられること。地域の価値を長く届けるために、販売数から商品開発を考える。それが、事業として成立する地域産品づくりの土台になります。
▼地域産品の商品開発を市場・設計・伝え方・数字の4つの視点で整理する全体像は、売れるは設計できるとは何かで解説しています。
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