地域産品はどの市場で戦うべきか|商品ではなく用途から考える

市場分析

この素材を使いたい。この加工技術を活かしたい。この地域らしさを伝えたい。昔からある商品を、もう一度売りたい。

地域の商品には、作り手側にしか分からない価値があります。だから、まず「何を作るか」から考えるのは当然のことです。

ただ、売場やECで商品を見るとき、生活者は少し違うところから入ってきます。「この地域の、この素材の商品が欲しい」と考えているわけではないことが多いのです。むしろ、手土産を探している、母の日に贈るものを探している、お酒に合うものを探している、職場で配れるものを探している、年末の挨拶に使えるものを探している。そういう、もっと具体的な用事から商品に出会います。

地域産品の市場を考えるときは、商品そのものだけでなく、どんな用途で選ばれるのかを見る必要があります。

目次

商品名から考えると、少し狭くなる

地域産品には、固有の商品名や素材名があります。地域の中では、その名前だけで通じることもあります。でも地域の外に出ると、名前だけでは伝わりにくいことがあります。

たとえば、ある地域の伝統的なお菓子。地元ではよく知られ、昔から食べられ、作り手も誇りを持っている。それでも、初めて見る人にとっては、まだ知らない商品です。知らない商品名を、そのまま検索する人は多くありません。まずは、日持ちする手土産、甘さ控えめのお菓子、目上の方に贈れるギフト、お茶に合う和菓子、職場で配れる個包装、といった言葉で探しているはずです。

商品名から考えると、すでに知っている人にしか届きません。用途から考えると、まだ知らない人にも届く可能性が出てきます。

用途は、生活者の入口になる

用途とは、生活者が商品を必要とする理由です。誰かに渡す、家で食べる、季節の挨拶に使う、お礼を伝える、会話のきっかけにする、少し気の利いたものを選ぶ。商品そのものよりも、用途の方が生活者に近いことがあります。

たとえば「地域の調味料」と言われるより、焼くだけの魚がおいしくなる調味料、忙しい日の夕食に一品足せるもの、料理好きの方に贈れる地域の調味料、と言われた方が、使う場面が浮かびます。同じ商品でも、用途が見えるだけで距離が縮まります。

市場を選ぶというのは、大きな業界を選ぶことだけではありません。生活者が商品を必要とする場面を見つけることでもあります。

「何の商品か」より「何に使えるか」

商品開発では、「これは何の商品か」を説明したくなります。地域の焼き菓子、地元素材のジャム、伝統製法の乾物、小さな工房の調味料。もちろん必要な説明です。ただ、生活者が知りたいのは、それに加えて「何に使えるか」です。

朝食に合うのか。お酒に合うのか。ギフトにできるのか。子どもも食べられるのか。日持ちするのか。持ち運びやすいのか。ここが見えると、商品は選びやすくなります。地域産品は素材や背景に魅力がある一方で、使い方が伝わりにくいことがあります。そんなときは、商品説明を増やすより、用途の言葉を足した方が早いこともあります。

用途から考えると、競合も変わる

市場を用途で考えると、競合の見え方も変わります。

たとえば、ある地域のお菓子を「地域の特産品」として見ると、競合は同じ地域の商品や、似た素材の商品です。でも「母の日の贈りもの」として見ると、競合は全国のスイーツや花、雑貨、コスメまで広がります。「職場で配れるお菓子」なら、個包装の焼き菓子やクッキー、せんべい、チョコレート。「お酒に合う手土産」なら、おつまみ、惣菜、チーズ、ナッツ、珍味と比べられます。

商品は同じでも、用途が変われば競合が変わります。競合が変われば、価格の見え方も、パッケージも、写真も、説明文も変わります。市場を決めることは、売り方を決めることでもあります。

小さな用途の方が、最初は戦いやすい

最初から大きな市場を狙うと、どうしても競合が強くなります。ギフト、お菓子、手土産、商品開発。こうした言葉は大きいぶん、すでに強いサイトや商品が多くあります。

一方、少し用途を絞ると、商品との相性が見えやすくなります。お酒好きに贈る地域のおつまみ、職場で配れる個包装の地域菓子、目上の方に渡しやすい甘さ控えめの手土産、母の日に贈る華美すぎない地域スイーツ。検索ボリュームは大きくないかもしれません。でも、選ぶ理由ははっきりします。

▼どの用途に需要があるかを検索データから見つける方法は、地域産品の商品開発で最初にやるべきことで解説しています。

地域産品の立ち上げでは、大きな市場で埋もれるより、小さくても相性のよい用途を見つける方が現実的なことがあります。

用途は、あとから増やせる

最初に選んだ用途が、ずっと固定されるわけではありません。商品を出してみると、思っていなかった使われ方が見えることがあります。自宅用だと思っていた商品が手土産で選ばれる。観光客向けだと思っていた商品が地元の法人ギフトで動く。若い人向けだと思っていた商品が、年配の方への贈りものに合う。そういうことは起こります。

だから、用途は最初から完璧に決めなくてよいと思います。まず仮説を置き、その用途で写真や商品説明を整え、売場やECの反応を見て、選ばれた理由を拾い、そこから別の用途を見つける。商品は同じでも、用途を増やすことで売り方は広がります。

地域の価値は、用途に接続して初めて届く

地域らしさは、商品に深みを与えます。でも、用途とつながっていない地域らしさは、生活者にとって少し遠いことがあります。「この地域の商品です」だけでは、まだ選ぶ理由になりにくい。

けれど、この地域の素材を使った母の日に贈りやすいスイーツです、地元で親しまれてきた味を職場で配りやすい個包装にしました、土地の食文化を感じられるお酒好きの方への手土産です。こうなると、地域の価値が用途に接続します。地域名を消す必要はありません。地域の価値を、生活者の用事に結びつける。それが、用途から市場を考えるということです。

おわりに

地域産品は、商品そのものから考えると、どうしても作り手の言葉になりやすいものです。素材、製法、地域名、歴史、想い。どれも大切です。ただ、生活者はそこにたどり着く前に、自分の用事から商品を探しています。誰に贈るのか、何に使うのか、どんな場面に合うのか、失敗しないか、価格に納得できるか。

この用途の入口を見つけることで、地域産品は選ばれやすくなります。商品ではなく、用途から市場を考える。それは地域の価値を薄めることではなく、地域の価値が届く入口を見つけることです。

▼地域産品の商品開発を市場・設計・伝え方・数字の4つの視点で整理する全体像は、売れるは設計できるとは何かで解説しています。

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この記事は「売れるは設計できる」の第1ステップ、需要確認に関連しています。

この記事を書いた人

大手百貨店で商品開発・売場編集・新規事業に携わる実務者。デジタルマーケティング・Webマーケティング・AI活用・商品写真を個人として専門的に学び、地域産品を「全国で選ばれる商品」へ翻訳する独自メソッド「売れるは設計できる」を体系化。和歌山県推奨品制度 副審査委員長、国際唎酒師、食の6次産業化プロデューサー。

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