「おいしい」だけでは商品説明にならない|地域産品がECで選ばれるための伝え方

EC改善

地域産品の商品説明で、よく使われる言葉があります。それが「おいしい」です。もちろん、おいしいことは大切で、食品であればおいしさは商品の前提です。素材にこだわり、製法に手間をかけ、作り手が真剣に向き合っているからこそ出てくる言葉だと思います。

けれど、ECの商品ページでは「おいしい」だけでは十分に伝わらないことがあります。なぜなら、画面の向こうにいる人は、まだその商品を食べていないからです。香りも、食感も、温度も分からない。作り手の空気感も、売り場の雰囲気も伝わりません。だからこそ、地域産品をECで届けるには、「おいしい」をもう少し具体的な言葉に翻訳する必要があります。

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「おいしい」は、買う理由になりにくい

商品を作る側からすると、「おいしい」はとても大事な言葉です。けれど生活者の目線で見ると、「おいしい」と書かれた商品はいくらでもあります。おいしいお菓子、おいしいお肉、おいしいお米。どの商品も「おいしい」と言っている中で、自分の商品だけを選んでもらうのは簡単ではありません。

特にECでは、横に比較対象が並びます。価格、写真、レビュー、容量、パッケージ、配送温度帯、賞味期限。その中で「おいしい」だけでは、他の商品との違いが見えにくくなります。大切なのは、「どうおいしいのか」「誰にとってうれしいおいしさなのか」を言葉にすることです。

味は、もう少し分解して伝えられる

「おいしい」は、分解できます。甘いのか、すっきりしているのか、濃厚なのか、軽やかなのか。香ばしいのか、余韻が長いのか、食感が楽しいのか、素材の味が前に出ているのか、後味がやさしいのか。同じプリンでも「濃厚でおいしいプリン」と書くより、「卵のコクを感じながらも、後味は重すぎない。食後にも食べやすい、なめらかなプリン」と書いた方が、食べる前の想像がしやすくなります。

同じ焼き菓子でも、「おいしい焼き菓子」ではなく、「バターの香りがふわっと広がり、外はほろっと、中はしっとり。コーヒーと一緒にゆっくり楽しみたくなる焼き菓子」と書くと、味だけでなく食べる時間まで伝わります。ECの商品説明では、味を感想で終わらせず、体験として描くことが大切です。

素材や製法は、生活者のメリットに変換する

地域産品の商品説明では、素材や製法の話が多くなりがちです。地元の牛乳、朝採れの卵、昔ながらの製法、職人の手作業、受け継がれてきた技術。どれも大切な情報ですが、それだけでは生活者にとっての価値が見えにくいことがあります。

たとえば「朝採れ卵を使用」という情報は、「卵の風味がしっかり感じられる」「素材の力を活かしたやさしい味わい」「家族にも安心して贈りやすい」という価値に変換できます。「職人が手作業で仕上げています」という情報は、「ひとつひとつ表情があり、量産品にはない温かみがある」「特別感のある贈りものになる」という価値につながります。素材や製法は、そのまま説明するだけでなく、受け取る人にとって何がうれしいのかまで言葉にすると、ぐっと伝わりやすくなります。

作り手目線から、贈る人目線へ変える

地域産品の説明は、どうしても作り手目線になりやすいです。どれだけ手間がかかったか、どれだけ素材にこだわったか、どんな歴史や技術があるか。もちろんそれは商品の大切な背景です。けれど、ギフトとして選ぶ人が知りたいのは、それだけではありません。相手に喜ばれるか、贈りものとして失礼がないか、自分の気持ちが伝わるか、価格に納得できるか、届いたときにきちんと見えるか。

つまり商品説明は、「作り手が伝えたいこと」だけでなく、「贈る人が知りたいこと」に変換する必要があります。地域産品をギフト化するうえでは、この視点の切り替えがとても重要です。

ECでは、食べる前の不安を減らすことも大切

ECでは、商品を手に取ることができません。だから買う前には小さな不安があります。どのくらいの量なのか、何人で食べられるのか、甘すぎないか、賞味期限は短くないか、冷蔵か冷凍か常温か、贈りものとして見栄えがするか、のしや包装に対応しているか、相手に直接送っても問題ないか。こうした不安が残ると、生活者は購入を迷います。

商品説明では、魅力を伝えるだけでなく、不安を減らすことも大切です。特にギフトの場合は、贈る相手に迷惑をかけたくない、失敗したくないという気持ちがあります。だからこそECの商品ページでは、商品の魅力と同じくらい、安心して選べる情報が必要になります。

「誰に、どんな時間を届けるか」まで書く

商品説明で大切なのは、商品そのものだけを書くことではありません。誰に届けたい商品なのか、どんな場面で喜ばれるのか、受け取った人がどんな時間を過ごすのか。ここまで書けると、商品は選ばれやすくなります。

たとえば「素材にこだわったジャム」ではなく「朝食の時間を少し楽しみにしてくれる、果実感のあるジャム」。「地域の焼き菓子」ではなく「コーヒー好きな方への、気軽だけど印象に残る贈りもの」。「伝統製法の調味料」ではなく「料理好きな方に、いつもの食卓を少し楽しくしてもらえる一本」。商品を説明するのではなく、その商品があることで生まれる時間を伝える。それが、ECで選ばれる商品説明につながります。

書く順番を整える

商品説明文は、書く内容だけでなく順番も大切です。最初から長い背景を語っても、生活者は読み切れないことがあります。「何の商品か → 誰に向いているか → どんな場面で使えるか → どんな味や特徴があるか → なぜその価値があるか → 必要な基本情報」の順で整理すると、読みやすくなります。

地域産品の商品説明では、最初に地域の歴史を長く書きたくなることがあります。もちろん背景は大切です。けれど最初に必要なのは、生活者が「自分に関係がある」と思えることです。関心を持ったあとに背景を読むから、地域の価値が伝わります。伝えたいことを全部入れるのではなく、読む順番を設計することが大切です。

一文目で、使う場面を見せる

商品説明文の一文目は、とても重要です。ここで、生活者が自分に関係ある商品だと思えるかどうかが決まります。「地元の素材を使った焼き菓子です。」と始めるより、「目上の方への手土産にも使いやすい、甘さ控えめの焼き菓子です。」と書いた方が、使う場面が見えます。

たとえば、「職場で配りやすい個包装の地域菓子です。」「母の日に感謝を伝える、やさしい甘さの地域スイーツです。」「お酒好きの方に贈りたい、香ばしい地域のおつまみです。」このように相手や場面が見えると、生活者は選びやすくなります。一文目では、商品の特徴だけでなく、選ばれる場面を見せることが大切です。

商品説明を書くときの問い

地域産品の商品説明を書くときは、次の問いを考えると整理しやすくなります。

  • この商品は、どうおいしいのか。どんな食感や香りがあるか。
  • 素材や製法は、生活者にとって何がうれしいのか
  • 誰に贈ると喜ばれるのか。どんな場面で選ばれやすいのか。
  • 買う前に不安になりそうな点は何か。
  • 受け取った人は、どんな時間を過ごすのか

この問いに答えていくと、「おいしい」だけでは見えなかった商品の価値が見えてきます。

まとめ|「おいしい」を、選ばれる理由に変える

地域産品にとって「おいしい」は大切です。けれどECの商品説明では、「おいしい」だけでは伝わりきらないことがあります。味を分解する。素材や製法を生活者の価値に変換する。作り手目線から贈る人目線へ変える。買う前の不安を減らす。誰に、どんな時間を届けるかまで書く。

こうした視点を持つことで、地域産品の商品説明は、ただの説明文ではなく選ばれる理由になります。地域のいい商品を、画面の向こうの生活者にきちんと届けるために。「おいしい」を、もう一歩先の言葉に翻訳することが大切なのだと思います。

▼ECで売れない原因の全体像については、ECで売れない地域産品に共通する3つの課題 で解説しています。

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この記事を書いた人

大手百貨店で商品開発・売場編集・新規事業に携わる実務者。デジタルマーケティング・Webマーケティング・AI活用・商品写真を個人として専門的に学び、地域産品を「全国で選ばれる商品」へ翻訳する独自メソッド「売れるは設計できる」を体系化。和歌山県推奨品制度 副審査委員長、国際唎酒師、食の6次産業化プロデューサー。

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